お客さん

私はサラリーマン家庭に生まれ育ち、木工をはじめるまで商売について考える機会はありませんでした。

木工をはじめる前は、映像作家として活動していましたが、大学職員という定職を持ちつつの活動だったので、報酬についてもゆるいもので、1週間かけた仕事なのに、ギャラは3万円なんていうこともざらでした。

 

木工をして生きていこうと、独立したまでは良いものの、商売については素人のまま。

自分の作ったものでお金を稼ぐって事の難しさを思い知り、何度も諦めかけました。

それでも、こうして続けていられる事、それは周りの人の助けがあったからです。

そしてその周りの人の中には、お客さんも含まれます。

 

この、お客さんが助けてくれるという感覚って、今までなかったものです。

僕に仕事を依頼して、その対価としてお金を支払ってくれる存在としてしか、お客さんというものを捉えてなかったのです。

ですが、思い返すと、僕にはこういった事が出来る、こういうのを作らせたら面白いといった、今まで気づけなかった自分の可能性に気づかせてくれるのはお客さんなんですよね。

また、判らない事があったら教えてくれたり、失敗しても元気づけてくれたりもします。

 

「お客様は神様」なんて言葉がありますが、その意味がやっとわかりかけてきた気がします。

お客さんの言うことは絶対正しい、といった意味ではなく、教えや気付きを与えてくれる存在としての神様という意味なんじゃないでしょうか。

このサイトのエッセイは、基本的にお客さんに向けて書いているので、だいぶ今回は迎合しているように思われそうですが、媚びているわけではありません。

お客さんってそうだったんだ!という自分なりの発見というか驚きを伝えたく、書いています。

 

私の屋号である「decci」は丁稚奉公からとったものです。

単純に木工学校時代に立ち上げたからデッチと名付けただけで、学校を卒業してすぐ独立した私には、師匠がいません。

ですが、今の私はお客さんに育てられました。

なので、私にとってはこう言えます。

お客様はお師匠様。

やっぱりちょっと媚びてるかも笑