曖昧な家具

はじめて家具をコンペに出品しました。
残念ながら入選はしませんでしたが、この作品を作るにあたり色々と考えたので、今日はその事について書いてみようと思います。

私は主に家具を作っていますので、普段から家具に興味を持ち色々と悩んでいます。

まず、思うのは家具とは何か、何をもって家具となるのか、ということです。
辞書で調べてみると、「家に備えて生活に用いる、やや大型の道具の総称。」と書いてあります。なるほど、家具は道具。
そして道具とは、何かを行うために使うもの、つまり「機能」が備わっています。
ということは、家具にも何かしらの機能が備わっていると。

余分な装飾を削ぎ落とし、シンプルにその機能を満たしているものにたいしては、機能美というような言葉で評価しますが、逆にその機能が曖昧な道具、という方向で家具を考えてみたらどうなるのか。それが今回の作品のテーマです。

機能が曖昧な事は、道具にとっては致命的な事かもしれません。
何に使っていいのか判らない家具なんて、その存在自体が矛盾しているようにも思えます。
家具メーカーにこんな商品企画を出しても、一笑にふされるだけでしょう。こんなの売れるわけないと。

しかし、私は「曖昧さ」に惹かれてしまうのです。
この「曖昧さ」を別の言葉で言い換えると、グラデーションかな。あとは「ゆらぎ」、「間(ま)」、少し違うかもですが「余白」とか。

こういった曖昧の美学って日本人は持っていると思うんです。
よく言われるのは縁側ですよね。
家の中と外という境界があるとすると、縁側は中でも外でもない、中間の意味合いを持っていると。
私も日本人ですし、日本人としての誇りを持つために、少しでもこの曖昧の美学を理解したいと思っています。そして、自分の作品の中にこの感性を活かしたいと。

さて、そんな訳で、今回はこんな家具を考えて作ってみたのでした。
簡単に説明すると、折れ曲がる木の板です。
伸ばして板として使ったり、壁に掛け軸のように飾ったり、折り曲げて花台にしたり、腰掛けにしたり。
実はこれを作るにあたり、試作も作ってまして、それは下の写真のように、さらに板な感じです。これを何枚か持っておくと、テーブルの天板になったり、コの字の状態にして積み重ね、棚として使うみたいな事を考えていました。

改めて見てみると、もう少し振り切れてもよかったのかなと思いますし、もっと曖昧さの使い方や理解を深めないといけないなと思いました。

今回はこういう形になりましたが、「曖昧な家具」というテーマは、この先もずっと私が挑戦していくものです。今後も機会があれば作っていきたいと思います。

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