桐たんすの修理をご紹介します。
私の工房の隣には桐たんす屋さんがあります。そこも職人さんがひとりでやられているのですが、同じ木工職人同志で色々とお世話になっております。
その職人さんに桐たんすの事を教わりながら、たまに修理もさせてもらっています。
桐はその柔らかさから、普段私が使っている広葉樹とはまた違った扱いや加工を要求されるので、すごく独特です。
今回は火事にあった桐たんすの修理をしました。写真を見ていただくとわかると思いますが、片方の側板全体が火で炭化してしまっています。
普段なら、鉋で削ってきれいにしてくのですが、ここまで炭化しているとさすがにこの部分は作り直しです。
まずはこの焦げた側板を外すことから始めました。側板のみならず、天板の一部と背板も焼けてしまっていたので、そこも取り外します。天板は新しく作った部分と接着するために、段違いに加工してあります。
この桐たんすは側板と天板の接続部分を、通し蟻組みで組んであり、角を丸めた天丸となっています。なので新しく作る側板と天板も、同じ組み方で作りました。
新しく作った部分を接着し、背板をはめ、焼けた部分以外のところはいつものように鉋で削り、削れてしまっている部分には埋め木をし、背板や抽斗底板の割れを塞ぎます。
この桐たんすは、扉にはなんと真鍮の象嵌がはめ込んであります。さすがにこの部分は削れないので、お客様と相談し扉はそのままとなりました。
写真にはありませんが、この後、浮造(うずくり)をしながら砥の粉を塗り、蝋引きをします。そして金具を取り付けて完成です。
しかし、桐たんすは燃えないと聞いてはいたのですが、実際に燃え残った桐たんすを見たのは初めてでした。
本当に燃えないんですね。火事の多かった江戸ではさぞ重宝しただろうなあ。
しかも着物を入れておけば虫には食われないし、軽くて持ち運びも楽だし、修理すれば何世代も使えるし、つくづく桐たんすはすごいなと思います。
ちなみに今回直した桐たんすは、大阪の高島屋が作ったものです。三越だったかな?
泉州(大阪)の桐たんすは、ちょっと洒落た作りなのが特徴だそうです。確かに真鍮の象嵌だったり、天丸だったり、金具も洒落た感じしました。逆に江戸のほうの桐たんすは実直というか、飾り気のないのが特徴だそうで。
最後にこの桐たんすのお盆がすごかったです。写真にあるお盆、たぶんこれ本丸盆というもの。
お盆の内側が丸くなっているのですが、木目が揃っているので後からすみ木をつけて丸く削ったつけ丸盆ではないと思うんです。
本丸盆は留(トメ)で四角を作ったあとに削り出しで加工しているそうなんですが、一体どうやって削っているんだろう。
さらにお盆の外側はふっくらとRがついていて、さらにお盆の淵には薄い板が貼られているという、凝った作りになっています。
w90cm × h90cm × d45cm
¥200,000
キリ