三重県津市駅前にオープンした「松阪牛 寿ゞきん」のテーブルを作りました。
お話があってから納品まで半年近くを制作に費やした、私にとっては大きなお仕事でした。
このテーブルの特徴は、何と言ってもこの材料です。
使用した木材は、琵琶湖に浮かぶ船でした。
木造船としての役目を終え、古材として市場に出回っていたものです。
新潟から京都まで、お客様が自身で探し回り、集めてきた材料です。
この貴重な船板の古材を、テーブルの天板として仕上げる。
船板自体の風情というか表情はとても良いのですが、船釘が出ていたり、穴が開いていたり、朽ちていたりで、このままではとても食事をするテーブルとしては使えません。
どうするのがベストなのか、お客様と相談しつつ、最終的には樹脂で埋めることにしました。
船板同士の組み合わせを考え、それらを接ぎ合せて、表面にワイヤーブラシをかけて木目を整えていきます。
ある程度、形が出来上がったところで、樹脂を流し込み、固めていきます。
樹脂が濁っているのは、灰を混ぜているからです。
テーブルの脚は船板ではないですが、杉の古材を使い、猪目の形をくり抜きました。
構造も、楔と段欠きで組み合わせてあり、強固な造りになっています。
また、脚は各パーツにバラせるので、自由度も高いテーブルです。
写真は店舗に納品した時のものですが、店舗の内装もすごいこだわりなのです。
本物の網代天井や、竹ひしぎの壁と、そう見えるように見た目だけ整えたのではなく、本当の素材を使った空間という贅沢さ、これには感動しました。
この空間に私が作ったテーブルが置かれる、そしてこれからそのお店で提供されるだろう最高の食事、その舞台となるという事に、興奮しました。
こういった高揚感は、普段の個人宅の家具作りにはないものだなと思いながら、三重県を後にしたのでした。
w180cm × h72cm × d90cm
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船板の古材