大きな戸棚と机を修理して欲しいとの依頼がありました。
お客様の親族が住んでいた古民家を、リフォームされる予定でした。
なるべく面影を残してリフォームしたいとの考えで、家具も修理して使えるのなら残しておきたいとのこと。
ただ予算がそんなにあるわけではないので、予算内でできる限りというお話でした。
現物を拝見しに伺ったところ、天井には杉の無垢材が使われていたり、とても趣のある家でした。
60年前に建てられたお家で、商店を営んでおられたそうで、土間があり、小上がりに商品陳列用の戸棚がありました。
その戸棚と仕事に使っていた机を修理したいとのこと。
かなり痛みが激しく、修理して使うには手間のかかる仕事になるだろうなとは思いましたが、お客様の考えに共感もあったので、予算内でお受けする事にしました。
修理といっても、大量生産品なら新しく買えるぐらいの値段にはなってしまうので、それでも直して使い続けたいというお客様には、つい共感して私も頑張って直してあげようと思ってしまいます。
修理やリメイクが終わってみると、生まれ変わったかのような家具の姿に驚かれるお客様が多いです。
頼んで良かったと言っていただけると、私も頑張って良かったと嬉しいのですが、逆に考えるとこの結果はお客様にとっては予想していなかったという事になります。
それでも安くない金額を出して、この家具を使い続けたいと、思い切った決断をされたお客様の心意気に私は痺れるのです。
さて、今回のリメイクですが、予想通りなかなかの痛み具合で、湿度による変形、腐れなど修復不可能なベニヤ部分は新しいベニヤに交換。
出来る限り分解して、劣化した接着剤の掃除、錆びた釘の交換などをしたあと、新たに接着剤を入れ組み直しました。
腐っていた一部の構造部材も、新たにナラ材で作りました。
組み上がってみるとほとんど見えない部分の修理ですが、生活の道具として、構造がしっかりしているのは大事な事です。
親族が使われていた面影が残るようにというお客様のご希望もあり、塗装は簡単に落とすのみとし、クリアウレタン塗装で仕上げました。
当初予定していた大戸棚と机以外に、小引き出しも加わり、写真にはありませんが、廃材を使った天板もお作りしました。
普段、修理する家具を長期間お預かりすることはないのですが、リフォーム期間中は家具を預かって欲しいとのこと。
代わりに古民家のリフォームで出た古材をいただけませんか?とお願いして、建具や杉の古材をいただきました。
w180cm × h220cm × d40cm
¥180,000
ナラ、杉、ラワン