海の博物館 1
もう半年以上も前の事になりますが、今更ながら三重県にある海の博物館へ行ったレポートを書こうと思います。
興味を持った理由
海の博物館は三重県鳥羽市にある博物館なのですが、この博物館を知ったのはお客さんとの雑談でした。そのお客さんが気に入っている博物館が三重県にあると。
内藤廣が若い頃に設計した建物で、お客さん曰く世界一の建物だと。
ちょうどその時、お客さんとは会ったばかり。これからそのお客さんのために家具を作る予定だったので、そのお客さんの好みを掴むためにその建物について調べました。
もう一つ興味を持った理由は、私の祖母が三重県伊勢市に住んでいたからです。
小さい頃はよく三重県に行っていました。子供の頃の楽しい思い出がたくさんある三重県なのに、海の博物館のことは全然知りませんでした。
鳥羽市にある水族館には何度も行っていたのにです。
こうして興味を持った海の博物館に、いつか行きたいと思っていました。
そして遂にチャンスが巡ってきたのです。
海の博物館の事を教えてくれたお客さんのオーダーで、三重県にあるお店に私の作ったテーブルを納品する事になったのです。
といっても、車にテーブルを積んで納品に向かう途中は、全然海の博物館の事は頭にありませんでした。納品するときはいつもの事ですが、何か忘れ物はないか、うまく設置できるだろうかと心配ばかりで、納品以外の事を考える余裕はとてもありません。
車の運転が苦手で、一人で高速を走っているのだから、なおさらです。
朝早くに東京を出発して、夕方ごろようやくお店に着きました。
着くなり、早速搬入です。テーブルが5台分あるので、なかなかの量なのですが、お客さんも手伝ってくれて、さらにお手伝いの人まで用意してくれていたので、その日のうちに全部設置することができました。
予定では、その次の日も1日かけて、テーブルの組み立てや調整に費やすつもりだったのですが、お昼頃にはテーブルの調整作業も終わってしまいました。
思いついて伊勢へ
無事に納品が終わり、良かったなと胸をなでおろし、車でコーヒーを飲みながら一服していました。
そのとき、ふと海の博物館の事を思い出したのでした。
なるほど、ここは三重県だ。
方向は逆だけどもう少し足を伸ばせば海の博物館があるぞ。
仕事も早く終わったし、これから向かえば今日中に海の博物館を見ることができる。
幸い急ぎの仕事もなく、急いで東京へ帰る必要もありません。
レンタカー会社へ連絡し、返却を1日延長。
その日の宿も見つかり、いざ海の博物館へ。
車の運転には相変わらずドキドキしつつ、鳥羽へ向かう。
伊勢自動車道を降り、懐かしの伊勢を素通りし、これまた懐かしい鳥羽水族館の前を通って、海の博物館へ到着。
午後3時ぐらいでしたでしょうか。
まずは建物を堪能しようと、展示を見つつ敷地内をぶらぶら。
木材を使ったアーチ状の構造を使って、大きなドーム状の空間を作っています。
そのダイナミックさは確かに面白く、興味深かったのですが、私がこの博物館で気に入ったのはテクスチャでした。
至る所のテクスチャが、私の心をくすぐります。
建物の木の壁、建物と建物をつなぐ石の道、木製扉の塗装、ブロック壁のトイレ、鉄扉の把手などなど。
これらは海にちなんだ物なのでしょうか。
なんというか、それぞれがわざとらしくなく、自然と存在しているようなのです。
これを「調和」と言うのでしょう。
適材適所に使われた素材、かつそれぞれの素材が他に迎合することなく、また他を邪魔することもない。素材が自分に自信を持ち、かつ他の素材をリスペクトしている。
ここを設計した内藤廣さんがどこまで演出したのかは判りませんが、もしこれを全て狙っているのだとしたら、すごいことだと思います。
平日の夕方ということで、人もまばらで、他に人の目を気にせずその環境と対話しやすかったという事もあると思います。
また、旅先の高揚感というものが、私の感受性を豊かにしたのでしょう。
これは旅の醍醐味ですよね。
こうして海の博物館を歩き回っているうちに、ある建物に行き着きます。
そこで私を待っていたものとは。。
次の記事へと続きます。